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書籍:商売の原則(著者:邱永漢) より

〜 商売の原則(著者:邱永漢 [きゅう・えいかん] ) 〜
時代を超えて不変の「商売の原則」というものがあるのではないかと思うようになりました。

変化の激しい時代ほど、「商売の原則」が必要(カバー裏より)
私はこの数年よく、「邱さんはバブルで損をしなかったそうですが、どんな妙手を使ったのですか」と聞かれることがあります。
何か目はしのきいた新手を使ったと思われたのかもしれませんが、
私としては、バブル期もそのあとも、別に目新しいことは何もしていません。

あるとすれば、いままで守ってきた「商売の原則」を、そのまま踏み外さずに商売をしてきたということだけでしょう。
しかし、この変化の激しい時代だからこそ、変わらない商売の大本、原理・原則を見直すことが必要なのだと痛感しました


まえがき(P.3)
この本には、人をあっと驚かすようなことは何も書かれておりませんが、
お読みになれば、きょうからでもきっと商売の神様が味方をしてくれるはずです。

と言いますのも、私はこの本で、商売の神様が決めたとしか思えない、時代を超えた「商売の原則」を、
いままでの私のさまざまな商売経験の総決算としてお話ししようと思っているからです。

 (中略)

でも、とりたてて何も特別なことはしてきませんでした。
守るべき原則を着実に守っているうちに、バブルも終わり、デフレ時代も過ぎて行こうとしています。

こうした経験のなかで、私は、商売には時代を超えて不変の「商売の原則」というものがあるのではないかと思うようになりました
昨今のように経済の情勢や、社会の様相が大きく変わる時代であればあるほど、その変化をくぐり抜ける商売の考え方があるとすれば、
それはもはや一人の人間の特殊な経験というより、商売の神様が決められた「商売の原則」と言ってもいいものではないでしょうか。

私が、もしこうした激変する時代にはじきとばされずに生き残れるとすれば、
それは私がたまたま多くの経験のなかから、知らず知らずのうちにその原則を見つけ出していたからといってもいいでしょう。

事実、私はいつのころからか、『変わる世の中、変わらぬ原則』という本も書いていますし、
『邱永漢の商売入門』(ごま書房)という本では、私なりにくみ取った「商売の原則」をまとめてもみました。

いま、この本を読み返してみると、むしろ現在のようにむずかしい時代にこそ知ってもらいたい「商売の原則」ばかりです。
時代を経て、経済が変わっても、そのまま通用してこそ、「商売の原則」と言えるのですから、
むしろ時代の変化のなかで点検され、磨かれて、さらに強固なものになったと言えるかもしれません。

 (以下略)


時代の変化が激しいときこそ、変わらない原則が必要(P.23)
私の例で言えば、多くの人が苦汁を飲まされたバブルの時期に、大きな影響を受けずにこれたのは、
まさにこの「商売の原則」を守っていたからだと言っていいでしょう。

バブル期の最中は、お金の貸し借りの関係が、それまでとまったく逆転しました。
バブルまえは、お金を借りたい人が頭を下げて銀行に行っていたのに、
バブル期になると、お金が余って銀行のほうから借りてくれる人を探しにきました。
すると当然、貸出しの条件なども従来とは比較にならないくらい甘くなっています。

私のところにも、一流銀行から、
「この三億円借りてくれませんか。担保もいりませんし、サインだけしてくださればいいですから」といった類の話が相次ぎました。

こう言われれば、いままでよほどお金に難渋していた人ならもちろんのこと、そうでなくても、つい手が出てしまうでしょう。
現に、同じようなケースで巨額のお金を借りて、そのときはほくほく顔をしていた人も多かったようです。

しかし、私は何のためらいもなく、そうした話は即座に断ってきました。
というのは、バブル期にはすべてのものの価格が上がり、不動産もかなり値段が上がっていました。
不動産に詳しいある実業家などは、
「不動産の利回りは二パーセントか、下手をすると東京・銀座あたりで土地を買って利用しても一・何パーセントしか回りませんよ」
と言っていたくらいです。
つまり、銀行の利息より、そのお金を投じて手に入れたものから上がる利益のほうが少なくなってしまう逆転現象が起こっていたのです。

私は、かねてから「借金の利息の払えない投資はしない」という戒めを自分に課していました。
ですから、こうした話にも、「すみませんが、金利を払える自信がありませんから」と言って、大して迷うこともなくお断りをしてきたのです。

この原則は、時代がどう変わろうと通用する商売の大原則の一つだと、私は思います。
別に特別な思いつきでもなんでもありません。
商売のしくみとか、自然の流れを考えて、失敗をしないようにと思えば、当然出てくる原則だと言えます。
奢らず、謙虚になって商売を考えれば、だれにでも思いつく原則のはずです。

とくに、時代の変化が激しく、どんなに才気や商才にたけた人でも計算が狂いそうなときこそ、
こうした万古不変の原則が威力を発揮すると思います。

いままで、商売の神様とか、世界のトップビジネスマンなど言われた人たちが、
つぎつぎに大失敗をして失脚していくのを見て、彼らが最後によりどころにした考え方のなかに、
こうした商売の原則がなかったのかと惜しまれます。

商売の原則(著者:邱永漢)

1995年出版の書籍になりますが、商売に関しての基本的な考え方が述べられています。
経営というよりも、もっと現場に近い場所から商売の原則に沿って話が展開されている内容であると言えるでしょう。

最近は、見栄えの良い、すでにシステム化された現代風の商売が多くなってきていますが、
長いこと生々しい商売を実体験してきた氏の著書は、最近のメジャーな経営書には無い、もっと現場に必要な示唆が含まれている。
経営者に必要なものが経営の原則だとすれば、複数の店舗運営を受け持つ責任者に必要なものが商売の原則だとも言えるだろう。

大変参考になる書だが、特に必読書ではないだろう。